集塵と静電気               

 一件落着かなと思ったのですが、実際の粉塵事故の話、危機管理がしっかりしたところにお勤めの方からのコメントを拝見して気持ちが動揺しています。転ばぬ先の杖? 正しくやるべき事をきちんとやっておいた方がいいような気がしてきました。
掲示板に書き込んでいただいたものを誠に勝手ながら転載させていただきました。

葛城さんからいただいたコメント
Streamさんからいただいたコメント

ピノキオさんからいただいたコメント
まなさんからいただいたコメント
瀬谷とーさんからいただいたコメント
粉塵爆発大事故


Streamさんから次のようなメールを頂いたことが発端です。

自分もサイクロン製作中(現場作業使える組立式)です。300φステンレスごみ箱使用でコーン部にはプラスチックの植木鉢を使った手抜き仕様で試運転してみましたが、予想以上の結果が出たのでこの仕様のまま収納・組立方法考慮して完成予定ですが、一つ問題があります。それは、静電気対策です。
最初ボディアースせずに試運転したところ昼間でもはっきり確認できる放電を指に受けてしまいました。電子ライターの着火より強烈に感じるほどでした。そのままだと、粉塵爆発の危険有り? 急遽水道の蛇口にボディーアースとってます。


アースを取らないで静電気を除去する方法は

接地しないで除去するには
@逆の極性のイオンで中和する

http://www.keyence.co.jp/seidenki/sensing/ 等
A自然に空中放電(コロナ放電)しやすい素材で包む
http://www.yasaka-ind.co.jp/E_Remov/E_Remov1.htm
などが見つかりましたが、いずれにしても結構大かかりとなりアマチュアの木工に導入するのは大変そうです。

現在自分自身でも集塵機を製作中でもあり、よくよく考えてみるとまことしやかに言われていることをそのまま鵜呑みにしている感じもあり、疑問の虫がムズムズと動きはじめ、以下がいろいろ調べた結果です。専門家の方でもしここは違う、こうした方が良いという御意見がありましたら是非ご指摘宜しくお願いします。

 まず木工家が気にしているほど、実際には粉塵爆発の話を聞いたことがないという疑問でした。塗料などの揮発性の可燃物、金属粉の粉塵などは別として木の粉塵と静電気で本当に爆発事故が起こったことがあるのか?
その時の現場の状態はどういうものだったのか?

@消防署の予防課  「聞いたことないねえ」
A消防研究所      メールの問い合わせに今のところ返事なし
B新聞検索       朝日新聞の過去10年間の記事検索で古紙粉砕工場事故の1件のみ
               炭坑、金属・揮発性可燃物などの事故を除く。事故規模が小さく紙面に載らなかっただけかもしれません


現在作成中のサイクロン集塵機で大いに参考にさせていただいたBillさんのホームページにこの疑問に対する回答がありました。
http://cnets.net/~eclectic/woodworking/cyclone/Ducting.cfm#Static%20Electricity
ここには集塵全体を網羅した大変詳細な資料が掲載されていますので、一読をお奨めします。
またMITのRodさんのPVCに関する記述もあり、これから要点を抜粋してみました。
http://mywebpages.comcast.net/rodec/woodworking/articles/DC_myths.html

まずはもっとも注目のダクトの材質と対策方法、その効果です。

@樹脂パイプに接地した裸導線を巻き付ける。
PVC自体が絶縁体であるため、導線が接触した部分しか電位が下がらない。
A樹脂パイプにアルミフォイルを巻き付け接地する。
PVCの外側の電位差はゼロになるが、内部の電位は殆ど変わらない。むしろ外側の電位が均一になることで内部との間で大きな放電が起こる可能性があって逆効果。
B金属製のパイプを使用する
パイプの内・外とも電位差はゼロとなる。

@Aは人間が触れた際に静電気ショックをなくす程度にしか役に立たないようです。

樹脂パイプの場合は内側に導線(裸である必然はない?)を通すか、内側に一定間隔で木ネジなどの金属を突き出させて接地した導線で結ぶ方が粉塵の電位を下げる効果が期待出来る。
しかし金属パイプにしても、数パーセント程度しかパイプ内部の粉塵の電荷を吸収することには役に立たない、ということに注目する必要があります

ダクトが遡上にあがるのは、集塵機械自体は完成品が殆どであり、唯一個人がいじるものであるから?
こうした事から静電気を気にするのならダクトのみにこだわっても意味が薄く、集塵機械本体、ダストバッグなどについても検討が必要です
。またそんなに危ないものであるのならば、樹脂製のダクトホースは販売されないはずです。

集塵機自体は大体金属で出来ていますから、一番粉塵の濃度が高いダストバッグでは?
バッグでは内部、外部の電位差で放電が起きたとしても通常厚みが0.数ミリであり、比較的低い電位差で放電開始するので、発火するような放電は起きにくい考えていいようです。

どうもこれまで聞いてきた事とは事情が違うような気がします。粉塵爆発とはミクロ的に見ると、近接しあった粉塵の粒子が次々と非常に早いスピートで連鎖的、爆発的に燃焼する事で起こるようです。それでは粉塵爆発の条件はどうなんでしょうか?

@粉塵が均一の微粒子で、空気との混合気がある範囲の濃度と体積で存在する。20mg/リットル、50g/1立方メートルなどのデータがある。これはゴミ箱内では十分ありえます。電位がもっとも高くなるこの部分が樹脂製という事が問題ありそうです。しかし手で触れた場合の放電は箱の外側ですからこれで発火するでしょうか?しかし密閉していないとまた話は変わってきます。
A十分なエネルギーの発火源(揮発性物質では0.1mJ=ジュール程度、一方木の粉塵が発火するために必要なエネルギーは1mJ〜100mJ程度のようです)

残念ながら私にはこのデータの粉塵濃度で室内が実際どんな状態なのか想像/説明出来ません。揮発性の可燃物の場合は論外ですが、テレビなどで見る実験などでは、裸火に粉塵を吹き付けており、それなら爆発的燃焼するわい!とあまり条件比較にならないような気がします。
またアマチュア工房で使用される集塵機、ダクトなどの中にある粉塵は高速で移動しており静止しているわけではない、またその体積ではそれほどの爆発的エネルギーは生じないようです。また集塵機が集める粉塵はご存知のように大きさが異なる粒子の混合物ですからなおさら起きにくい。

木の粉塵濃度が高くて、ストーブ、ライターなどの裸火、グラインダーで金属を切削する大きな火花などの発火源があれば粉塵爆発の可能性はあります。バッグから粉塵を処理しその際にいっぱい舞いあがって充満していたらどうでしょうか? 集塵を全くしていない室内が最悪です。

以上を総合すると
@集塵機は工房外に設置するのがベスト
A集塵機本体、ダクト、収集箱は金属製でアースするのが好ましい(PVCでもアマチュア程度では可)
B工房内に大量の粉塵が存在しないようにクリーンにしておく。これは健康面からも必要です。
C非常に細かい粉塵を除去するため工房内を換気、あるいはエア・クリーナー等を併用する
D発生した粉塵は作業が終わったら工房外にすぐ片づける。あるいは蓋付きの金属缶に入れる。
E密閉状態で裸火を使用、あるいは金属を切断/切削する火花が飛ぶ作業をしたりする際は注意。丸鋸などのブレードが金属と接触しても火花が発生します。

 これまで静電気に関してどうも意見と科学的事実が混同されているように感じると書かれていましたが、アメリカでの木工の普及度を考えても信頼性は高いのではないかと思います。ただしこの他にも気が付いていないファクター、たとえばコンセント、工具の電源スイッチの容量・構造、換気状態などもあると思われますので結果についての責任は取れません。ご自分の状況に応じて様々に検討してください。が、理解し状況に応じた対策をすればそんなに恐れおののくものでもないようです。

<資料>

*まずは静電気の極性から
http://www.ishizuka-sangyo.co.jp/static_explain.htm
これから異種の素材間で電位差が大きくなる事が分かります。


*工場の保安基準より
http://www.hosokawamicron.co.jp/line-up/index3/contents/132/main.htm
木の粉塵の爆発力は小麦粉などより強く、侮れないようです。産業用ですので厳しい基準ですが大いに参考になります。

2004 Jan.


小国木材加工研究所の葛城さんからいただいたコメント

 含水率や吸塵量、吸塵速度によってパイプ内部との摩擦で帯電量は変わるが、アースをしておくにこしたことはないという程度の認識です。塩ビ管に対する認識はほとんどなく、我々のような工房程度の仕事量ではたいして問題にならないのではないか、というような話の印象でした。
(工場の場合は連続作業ですし、我々の場合、長くて半日もないと思います。まあ、長時間吸入ホースを持って掃除をすると指先から激しくスパークしますが・・・)



Streamさんからいただいたコメント

自分の経験上、細かいノコくずやサンダーの粉など、焼却炉に放り込むと空中で一気に燃え上がり何度か眉毛や髪の毛を焦がした事があったものですから。
身の回りの人(建築関係)に木工の粉塵爆発事故について聞いてみましたが何の情報も得ることは出来ませんでした。現実に、掃除機・ダストコレクター・集塵機・木工現場など事故の事例を耳にしないと言う事はあまり神経質にならなくても大丈夫かと思ったりもします


(註)Streamさんは建築関係のお仕事をされています。


ピノキオさんからいただいたコメント

丁度1年前にデルタの集塵機を購入して、今頃は集塵機の配管に掛かりっきりだったと思います。
静電気については私も諸先輩方に粉塵爆発は恐いということを知らされ思案していました。
ダストコレクションの洋書にもアース線をパイプに巻いた絵などが載っており静電気対策は必要なんだなと思いました。
最初は塩ビパイプ部には銅線を巻きつけてアースに接続しましたが、今は集塵機本体のアースは接続していますがメインのパイプには何もしていません。
確かに静電気が発生していることは確認できますが、それが着火するとは考えにくいのでは?安易なことは言えませんが、私は現状で特に問題はないと思っています。
それでは、またよろしくお願いします。


まなさんからいただいたコメント

化学プラントは私の本職でして、一言(^^)。
可燃物はかなりの部分で爆発限界を持っていますの で、危ないと思ったほうがいいと思います。小さいところでは私の集塵機も何回か爆発しました。爆発といっても火花が出るのではなく、たとえば大きな板がバ タン倒れたような雰囲気です。対策はやはりボンディングが効果的でしょうね。
ぽっくり行かないように注意しましょうね。


瀬谷とーさんからいただいたコメント

私もEN○OSマークでブランド展開している会社の孫会社で、精油所関係の防災業務に携わっているのですが、粉塵(種類を問わず)が密閉された環境で自由運動できる場合その粉塵の絶対数に比例して静電気の蓄電量も多くなり、大変危険です。
ま た、運動範囲が狭い場合は跳ね返りが多くなりますので、限界ぎりぎりまで分子が帯電してしまいます・・・そこで何を対策するか、基本的には容器自体のボ ティーアースなんですけど、そのほか容器の中に金属棒を垂直に立てて避雷針のようにして静電気を逃がすとか・・・普段着用している作業着等も帯電防止の物 なのですが、完全とは行きません・・・ロッカーを開けるときとかバチッと来ますよ
それと油ウエスは基本的に自然発火すると考えてください。船舶の場合法律でも油ウエスは耐火性の容器に密閉して・・・とうたわれているぐらいですから・・・天ぷら油を吸わせたペーパーが自然発火するのと原理は一緒です
皆さん先ずは安全第一で・・


粉塵爆発事故

Streamさんから教えていただいた粉塵爆発事故を調べてみました。

香川県西部 詫間町の建材製造業 大倉工業 詫間工場で、木材の粉塵による粉塵爆発事故が起き、3000平方メートルが全焼、2人が死亡、2人が重体、9人が重軽傷 を負うという痛ましい事件が起こりました

4、5年前の11月28日、午後4時50分ごろのことです。以下は地元の消防署の予防課に問い合わせた内容と新聞記事からの要約です。

「地震か」飛び出す住民 - 赤い閃光走る (読売新聞)、夕やみ裂く火柱50メートル - 爆風で倒された 恐れおののく従業員ら(四国新聞)

事故が起きたのは香川県西部の詫間町 建材製造業 大倉工業詫間工場、発端は木のチップを粉砕し、接着剤を混ぜて圧力をかけ合板(パーティクルボードのようなもの?)を製造する工程の、木のチップを更に細かく粉砕し乾燥させる機械とその後に続く接着材との混合機械の中間辺りで起こったと推定される。従業員が接着剤を乾燥させるドライヤーの異常を知らせる音を聞いており、ドライヤー付近で発火、チップの粉塵に着火したのではないか?。消防の話では火を発見した後、機械を逆運転したところ爆発したらしいという話もある。
この機械は1971年製で20年以上稼動していたもの、ドライヤーの出口での温度は110度程度、操業は24時間、月に4回は製造ラインを止め、粉塵の清掃をしていた。それまでに1、2回木粉に引火するなどして2日間ほど操業を停止した事はあった。


というのが事故の概要ですが、初めの出火(原因特定できず、チップに金属片が混入していて機械内部との衝突で火花が出たという事も考えられるということでした)が木の粉塵、接着剤そして燃料パイプ等に波及してすさまじい爆発事故となってしまったようです。消防は木粉が静電気で発火したとは見ていないようです。但し今後こうした事故を防ぐために・・・という質問への回答はいまひとつ歯切れが悪かったような・・・。


その他、1998年以降、損害保険料算定機構のデータベースからは、製材所の火災はあったが木粉の粉塵爆発は見つからなかった。

2004 Jan.

茨城県の工場で集じん機が爆発、作業員12人けが

 27日午後1時30分ごろ、茨城県つくば市上大島の木材ボード製造販売会社「日本ノボパン工業」(本社・大阪府堺市、山本拓社長)つくば工場で、集じん機が爆発、屋根のプレート瓦や壁の一部を壊した。

 爆発の衝撃や瓦の破片などで作業員12人が負傷した。ダクト内のベルトコンベヤーの一部が延焼中で、つくば市消防本部が消火作業を続けている。

 茨城県警などの調べによると、同工場は鉄骨3階建てで、破砕した木材チップを加工して、床板などを製造している。(読売新聞)


(註)古材を粉砕して、圧縮ボードを製造する工場らしいです。チップの貯蔵タンクは無事だった。


<工場爆発>集じん機の爆発で12人重軽傷 茨城県つくば市

 27日午後1時35分ごろ、茨城県つくば市の上大島工業団地内にある建材会社「日本ノボパン工業」つくば工場で集じん機が爆発、作業員ら2人が重傷、 10人が軽傷を負った。つくば北署の調べでは、爆発したのは工場3階にある木材チップを集めるための集じん機で、作業員らは屋根の瓦が落下し、破片などで 負傷した模様。(毎日新聞)

(註)集塵機って・・・

化学プラントの仕事をしている知人からのコメントです。

今日茨城と富士宮で粉塵爆発事故がありました。

茨城は木材チップをすりつぶす機械「リファイナー」の近くで2度目の爆発が起きた
という。
 県消防防災課によると、集じん機とリファイナーは配管でつながっており、配管内
で木材チップがくすぶっていた。

富士宮は紙粉砕加工会社の紙紛ストックタンクが爆発したそうです。

私の考えではどちらも異物があり(茨城は接着剤、富士宮はインク等)
湿度的には問題ないと思うのですが、プラスのなにかが加わったかなと思います。
加工材の集塵は気をつけた(やめる)ほうが(特に冬場)いいと思います。

2004 May